突き出し
昔は、人形が走ったり空を飛んだりジャンプするアニメを撮影するときに、人形を突き出し(ロッド)で支えて空中で固定する方法でしたが、最近は常に人形を突き出しで支えながらアニメートするという形に変わってきました。 映った突き出しは撮影後に編集で消します。
この方法を使うときは、あらかじめ人形に突き出しを固定する仕掛けをつけておくことが多いです。
どの方向からどうやって突き出すかは、セットの配置や照明の向き・人形の動き・アニメートする場所など、様々な要因を元に、主にアニメーターが決めます。アニメートのしやすさも大事ですが、編集の時に突き出しを消さないといけないので、消しやすい位置から突き出す。ということも大事になります。ここでは突き出しの種類をいくつか紹介しようと思います。
1.戦車(タンク)
見た目からそう呼ばれていますが、ウェイトのついた器具から突き出しを出して人形を固定する方法です。ギアがついて上下に微調整できるものをよく見かけます。
突き出しの太さは人形の重さによって決まります。突き出しは細ければ細いほど周りに与える影響は少ないので、軽いものを支える場合は無意味に太い大掛かりな突き出しは使わないほうが後処理が楽になります。
2.上突き出し
セットの上方に角柱を渡して、人形の真上から突き出しを出して人形を支える方法です。地面から離れるので突き出しの影が落ちにくいですが、器具全体が動いたときに照明に与える影響が大きい場合もあるので、照明の向きに注意が必要です。また、角柱の向きの動きには強いですが、それ以外の動きは制約が大きいので、人形の動きも考慮する必要があります。
3.死角突き出し
カメラの死角から突きだす方法です。人形がその場から動かない場合に使えます。カメラに映らない死角から突きだすので、後処理で突き出しを消す必要が無いのが特徴です。安定性が悪いポーズだったり、下半身をしっかりと固定したい場合などに使います。
人形側
突き出しのテクニックは、上記の”どこから突き出すか”と、”どうやって人形に固定するか”の2つに分けられると思います。また、コマ撮りは人形以外のものを動かすこともあるので、その被写体の構造も考慮しないといけません。ここでは、人形側の固定方法をいくつか紹介したいと思います。
1.穴を開ける
人形を作るときにあらかじめ穴を開けておいて、そこに突き出しを差し込みます。人形アニメーションでは一番一般的な方法で強度も一番強いです。もっとも多いのは人形の腰の後ろに穴を開ける方法です。腰は人間の動きの原点のようなものなので、様々な動きに対応しやすいです。ただし、例外もあるので、人形を作る際に腰の前後左右と上半身の複数個所に穴を開けておくこともあります。穴は金属パーツで作ることが多いです。木やプラスチックだとアニメートしている間に中が削られてしっかり固定できなくなってしまうので、金属パイプを埋め込むことが多いです。一番しっかりと固定できるので重量があるものに適しています。
2.針を刺す
人形がやらかい赤い場合や、人形にピンバイスで穴を開けておきます。強度は比較的ありますが、人形が突き出しを差し込んだ向きが下向きの場合はぬけやすくなります。
3.テープで止める
動かすものがガラスや陶器・中に液体が入っているもの。など、穴を開けたり針を刺せない場合がたまにあります。そういう場合は両面テープで固定するしかありません。屋外用などの強力なテープを使うと、しっかりと固定できますが、固定するものが塗装されていたり紙が貼ってあったりすると、テープを剝がしたときに塗装が取れてしまったり、破けてしまうことがあるので、十分に確認をとる必要があります。